入居者付き不動産を相続するという現実
相続した不動産を活用しようとしたとき、すでに「入居者が住んでいる」というケースは少なくありません。
親族がそのまま住んでいる場合もあれば、第三者に賃貸中だったり、古くからの借家人がいることもあります。
このような状況では「自由に売却できないのでは?」「建て替えは不可能なのでは?」と不安を感じる方が多いでしょう。
しかし実際には、入居者付き不動産は必ずしも不利ではありません。
むしろ、正しい手順を踏むことで、将来的に収益性の高い資産へと変えられる可能性を秘めています。特に戸建てをアパートに建て替えることで家賃収入を増やし、安定した資産形成につなげる方法は有効です。
本記事では、入居者がいる相続不動産にどう向き合うか、その課題と解決策、そして収益化の具体的なステップを解説します。
入居者がいる不動産の課題
入居者がいる不動産を相続した場合、いくつかの課題に直面します。
第一に、自由に売却できないという点です。
入居者がいる状態では「オーナーチェンジ物件」として投資家に売却するしかなく、買い手の範囲が限られます。
また、売却価格も通常より下がることが一般的です。
第二に、建て替えの制約があります。
普通借家契約で入居している場合、正当な事由と補償を提示しなければ立ち退き交渉は進みません。
補償金の支払いが必要なケースもあり、時間も労力もかかります。
第三に、収益性の低さです。
古い物件では家賃が相場より安く設定されていることが多く、固定資産税や維持費を賄うには不十分なケースもあります。
そのうえ、建物が古くなれば修繕費用も膨らみ、空室リスクも増えます。
つまり、入居者付き不動産は「放置すれば負担が増える」可能性が高いのです。
しかし逆に考えれば、適切に活用することで「安定した収益源」に転換するチャンスでもあります。
入居者がいてもできること
入居者がいるからといって、選択肢が全くないわけではありません。代表的な方法は次の通りです。
- オーナーチェンジ物件として売却
現在の入居者付きのまま投資家に売却する方法です。短期間で現金化できる反面、売却価格は通常より低めになります。 - 現状のまま賃貸経営を継続
家賃収入をそのまま得て、固定資産税や維持費をカバーします。ただし収益性が低い場合は改善が必要です。 - リフォームして家賃アップ
建物を部分的に改修して、より高い家賃設定を可能にします。費用対効果を見極めることが重要です。 - 建て替えてアパート化
戸建てを複数戸のアパートに建て替えることで、収益性を大幅に高められます。土地を所有しているため融資が通りやすく、資産形成にも直結します。
特に「建て替え・アパート化」は、長期的に見たときに最も収益アップの可能性が高い方法といえます。
入居者がいる不動産をアパートに建て替える失敗しない手順
では、入居者がいる不動産をアパートに建て替える場合、どのように進めればよいのでしょうか。ここでは「失敗しないための手順」とポイントを整理します。
手順1:契約内容の確認
まず入居者がどのような契約で住んでいるのかを確認します。定期借家契約であれば契約期間終了を待つことができますが、普通借家契約の場合は「正当事由」が必要です。家族構成や居住年数なども考慮して判断する必要があります。
手順2:立ち退き交渉と補償の検討
建て替えのためには入居者との合意が不可欠です。補償金や代替住居の提案などを組み合わせ、納得してもらえる条件を提示しましょう。ここでの誠実な対応がトラブル防止につながります。
手順3:資金計画の策定
土地を所有している場合、金融機関からのローンは非常に通りやすいのが特徴です。フルローンでアパート建築を行えるケースも多く、自己資金を大きく減らさずに新築投資が可能になります。
手順4:建築計画と利回りのシミュレーション
どの程度の戸数で、どんな間取りにするかを設計段階でシミュレーションします。利回りや返済計画を具体的に試算し、家賃収入でローン返済がまかなえる計画を立てることが大切です。
手順5:アパート建築と運用開始
新築したアパートは複数戸の家賃収入を生み出し、安定したキャッシュフローを実現します。管理会社に委託すれば、運営の手間も大幅に軽減できます。
建て替えてアパート化するメリット
建て替え・アパート化には数多くのメリットがあります。
- 収益化できる:戸建て1軒分の家賃より、複数戸のアパート収入の方が圧倒的に多い。
- 家賃単価の引き上げ:新築物件として高い家賃設定が可能。
- フルローンが組みやすい:土地を担保にできるため、金融機関からの融資がスムーズ。
- 資産形成につながる:ローンを返済しながら資産が残り、将来的な資産価値も維持。
- 相続税対策にも有効:収益不動産化することで、将来の相続税評価額を調整できるケースもある。
入居者がいた物件が「収益物件に変わる」というのは大きな価値転換です。リスクと手間をかけるだけのリターンが見込める方法といえるでしょう。
まとめ ― 入居者付き相続不動産は「チャンス」に変えられる
入居者がいる相続不動産は、「自由に動かせないから不利だ」と考える方が多いですが、実際には収益化の大きなチャンスを秘めています。特に、建て替えてアパート化する方法は、土地を持っている強みを活かしてフルローンを引き、資産形成につなげられる点で非常に有効です。
もちろん、立ち退き交渉や資金計画など乗り越えるべきステップはあります。しかし正しい手順を踏めば、入居者付き不動産を「負担」ではなく「資産」に変えることができます。相続した物件をどう活かすか悩んでいる方は、処分するだけでなく「収益アップのスキーム」として建て替え・アパート化を検討してみてはいかがでしょうか。