相続で不動産を受け継いだとき、多くの方が最初に迷うのが「売却するか」「賃貸に出すか」という選択です。
「売ってしまえば現金化できるし、管理の手間もなくなる」と考える方も多いのですが、実際の相談現場では「賃貸」を選ぶケースが意外なほど多くあります。
なぜ、相続不動産は「売る」より「貸す」方が選ばれるのでしょうか?
この記事では、岡山で実際にあった相談事例を交えながら、その理由や注意点を解説します。
相続不動産の売却で起こりがちな落とし穴
「相続した家やビルを売却して現金化しよう」と思っても、実際には想定外の費用が発生することがあります。
売却でかかる主なコスト
- 解体費用:古い建物を取り壊す場合、数百万円単位
- アスベスト除去費用:建物にアスベストが含まれていれば、解体費用に加えてさらに数百万円かかる
- 仲介手数料や登記費用:売買を成立させるための諸経費
- 税金:譲渡所得税など
こうした費用を差し引くと、
「売却価格は1,500万円だったのに、解体やアスベスト処理で1,500万円かかり、手元に残るのはゼロ」
という事態も珍しくありません。
賃貸なら「手出しゼロ」で始められる
一方で、相続不動産を賃貸に回す場合は、売却とは違うメリットがあります。
- 自己資金ゼロで始められる
最小限の修繕だけで貸し出せるケースが多い。 - 固定資産税の負担を家賃でカバーできる
空き家にしておくより、維持コストが下がる。 - 売却の判断を後回しにできる
将来売るにしても、「まず貸して様子を見る」選択肢が残せる。
特に「手出しゼロで収益化できる」点が、売却より賃貸を選ぶ大きな理由です。
実際の事例:アスベスト物件をどうする?
岡山であった実際のご相談をご紹介します。
こちら、以前の事例はこちらから参照
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選択肢は2つ。
- リフォームしてから売却する(リスクが大きい)
- サラリーマン大家に売却し、その人が賃貸運用する
最終的に選ばれたのは2の方法でした。
相続人は「手出しゼロ」でリスクなく物件を処理でき、サラリーマン大家は投資物件として活用できる、双方にメリットのある形となりました。
賃貸を選ぶメリットのまとめ
- 売却よりリスクが低い
- 売却はいつでもできる
- 初期費用ゼロで収益化できる
- 将来的な選択肢を残せる
相続不動産の活用法として、「まずは賃貸」が多く選ばれる理由はここにあります。
賃貸以外の選択肢は?
もちろん、「賃貸に出す」以外の選択肢もあります。
相続した不動産の状態や家族の事情によって、取るべき出口戦略は異なります。
1. 売却
- まとまった現金をすぐに得られる
- 管理の手間から解放される
- ただし「売っても残らない」ケースには注意
2. リフォーム・リノベーションして活用
- 古い家をリフォームして資産価値を高める
- 自分や家族が住む用途としても使える
- 投資としては費用対効果の見極めが必要
3. 空き家のまま維持
- とりあえず放置して様子を見る
- しかし固定資産税の負担や管理リスクが大きい
- 倒壊や火災のリスクで近隣トラブルになる可能性も
4. 専門家に相談して出口を設計
- 不動産管理士、税理士、司法書士など
- 「売る・貸す・持ち続ける」の判断を総合的にアドバイスしてもらえる
注意点(デメリットも知っておこう)
- 賃貸には「空室リスク」や「修繕費負担」もある
- 売却はスピード解決できるが、手残りが少ないこともある
- 相続人同士の意見がまとまらず、処分が進まないケースも多い
大切なのは「どの方法が自分たちに合っているか」を冷静に見極めることです。
まとめ
相続不動産をどうするかは大きな悩みですが、実際の現場では「売却」よりも「賃貸」という選択肢が選ばれることが多いです。
- 売却はコストがかさみ、手残りゼロのリスクがある
- 賃貸なら手出しゼロで収益化できる
- アスベストや老朽化リスクのある物件は特に「賃貸」が現実的
もちろん賃貸以外の選択肢もありますが、まずは「売るか貸すか」の二択で考えたとき、「貸す」という方向に軍配が上がることは少なくありません。
もし相続不動産の扱いに迷ったら、専門家に相談しながら、自分たちに最も合った出口戦略を選ぶことをおすすめします。