近年、少子化や多様な家族形態の広がりに伴い、「養子縁組」「特別養子縁組」「里子」に関する関心が高まっています。
この記事では、これらの制度について分かりやすく解説し、実際の事例や統計データを交えて詳しくご紹介します。
また、相続に関連する重要なポイントや注意事項も解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
養子縁組とは?
養子縁組とは、血縁関係のない人同士が法律上の親子関係を結ぶ制度です。
これにより、養子は養親の子どもとして法律的な権利・義務が発生します。
不動産の相続や承継計画においては、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2つがよく利用されます。
1.養子縁組の種類
(1) 普通養子縁組
- 特徴: 実親との法律上の親子関係が継続される養子縁組。
- 目的: 相続対策、家系の存続、事業承継など。
- 対象: 成人も養子になれる。
- 手続き: 養親と養子の合意後、市区町村役場への届出のみで成立。
- 離縁: 当事者間の合意で離縁可能。
(2) 特別養子縁組
- 特徴: 実親との法律上の親子関係が完全に終了し、養親のみとの関係が成立。
- 目的: 養子の福祉を最優先に考えた制度。
- 対象: 養子が原則として15歳未満(家庭裁判所の審判が必要)。
- 手続き: 家庭裁判所への申立て、試験養育期間(6か月以上)、審判。
- 離縁: 原則として不可。ただし、虐待など特別な事情がある場合は検察官などが申立て可能。
図でまとめるとこのようになります。
目的に合った養子縁組を利用することがスマートですが、現在の日本は後者の相続対策目的の普通養子縁組の活用方法が多数を占めます。
項目 | 特別養子縁組 | 普通養子縁組 |
---|---|---|
目的 | 子供の福祉や利益のため | 家の存続や相続対策等のため |
要件 | ・養親:結婚している夫婦 ・養子:原則として申立て時に15歳未満 ・実親の同意:必要 ・縁組の必要性:実親による養育が困難などの事情 | ・養親:単独もしくは独身者でも可能 ・養子:年齢制限なし ・実親の同意:未成年の場合、親権者の同意が必要 ・縁組の必要性:なし |
手続き | ・家庭裁判所への申立て ・6か月間の試験養育期間 ・家庭裁判所による審判 | ・市区長村役場への届出 (当事者間の合意、契約で成立する) |
離縁 | ・原則としてできない ・養親による虐待などの場合は、養子や実親もしくは検察官からの申立てで可能 | ・当事者間の合意でいつでも解約できる |
縁組後の実親との親子関係 | 終了する | 存続する |
戸籍への記載方法 | 実子と同じ(例:長男、長女) | 養子、養女 |
2.日本での特別養子縁組の実績
養子縁組のイメージって、
「子供を授かれなかった親族に、自らのの子を預けて、その家庭に入る。」
ちょっと一昔前の制度と思っていたのですが、現代も養子縁組制度は活用されています。
■普通養子縁組の推移
データや文献文献を色々探してみたのですが、見当たらなかったです💦
おそらく、市区町村にて申請が可能なため、統計資料がないのでしょうね。
■特別養子縁組の推移
少し古い平成27年時点の厚生労働省の資料によりますと、こちらは年々増加傾向にあります。
特別養子縁組の成立件数
3. 養子縁組の手続きの流れ
(1) 普通養子縁組の手続き
- 合意: 養親と養子が合意。
- 届出: 市区町村役場に「養子縁組届」を提出。
- 提出書類には、養親と養子の署名捺印が必要。
- 戸籍の変更: 養子の戸籍に「養子」と記載され、養親の戸籍に追加される。
(2) 特別養子縁組の手続き
- 養子の受け入れ準備:
- 養親が結婚している夫婦であること。
- 養親の年齢が25歳以上であること。
※養親となる夫婦の一方が25歳以上である場合、もう一方は20歳以上であればOK。
- 家庭裁判所への申立て:
- 必要書類を揃えて申請。
- 書類例:申立書、住民票、戸籍謄本、養育計画書など。
- 試験養育期間(6か月以上):
- 養親が実際に子どもを養育し、その適性が確認される。
- 家庭裁判所の審判:
- 裁判官が養子縁組の可否を判断。
- 戸籍変更:
- 養子の戸籍が実子として記載され、実親との関係が終了。
4. 養子縁組の良い点と悪い点
私たち相続の観点からすると、「普通養子縁組」と「特別養親縁組」では大きく異なります。
また、養子縁組は良い話ばかりではないので、ご本人達へ十分に配慮し、慎重に取り扱わなければいけません。
■良い点
普通養子縁組
- 相続対策: 養子が増えることで、法定相続人が増加し、相続税の控除枠が広がる。
※相続人として法定相続分が認められるため、相続税対策に利用されることが多いです。 - 家系の存続: 子どもがいない場合でも、家系を維持できる。
- 柔軟性: 成人同士の養子縁組も可能。
養子を増やすことで、法定相続人の数が増加し、相続税の基礎控除額が引き上げられ、相続税の減税施策の一つです。
相続税の基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
例1)法定相続人が1人の場合 → 3,000万円 + (600万円 × 1) = 3,600万円
例2)法定相続人が2人の場合 → 3,000万円 + (600万円 × 2) = 4,200万円
特別養子縁組
- 養子の福祉向上: 安定した家庭環境が提供される。
- 親権の完全移行: 養親に完全な親権が与えられる。
- 実子と同等の権利: 戸籍上も実子と同様に記載される。
■悪い点
普通養子縁組
- 相続の複雑化: 実親と養親の両方から相続権が発生する。
※メリットと捉える人もいますね - 感情的問題: 親族間で軋轢が生じることもある。
※いきなり部外者が相続人になれば、取り分が減りますからね。
特別養子縁組
- 手続きの煩雑さ: 家庭裁判所の審判や試験養育期間が必要。
- 離縁が困難: 原則として離縁が認められないため慎重な判断が必要。
5. 養子縁組に関連する法律的ポイント
- 民法:
- 養子縁組は「民法第817条」以降で規定されている。
- 特別養子縁組は1988年に制度化され、2020年の法改正で適用年齢が15歳未満に引き上げられた。
- 相続法:
- 養子は法定相続人として、実子と同等の権利を持つ。
- 特別養子縁組の場合、実親からの相続権は消滅。
里子制度とは?
次に里子制度とは、児童相談所が親元での生活が困難な子どもを、里親に預ける制度です。
一時的な養育が目的であり、法律上の親子関係は発生しません。
里親になるための条件
- 経済的安定があること。
- 心身ともに健康であること。
- 研修を受講し、適格と判断されること。
養子縁組と特別養子縁組・里子の比較表
項目 | 普通養子縁組 | 特別養子縁組 | 里子 |
---|---|---|---|
法律上の親子関係 | 養親と実親双方 | 養親のみ | なし |
年齢制限 | なし | 6歳未満(例外あり) | なし |
相続権 | 養親・実親両方にあり | 養親のみ | なし |
相続の観点で注意すべきポイント
相続における養子縁組の影響は非常に大きいです。
以下のポイントを押さえましょう:
- 養子縁組により相続人の数が増えるため、遺産分割に影響を及ぼします。
- 特別養子縁組の場合、実親からの相続権は失われます。
- 里子には相続権がないため、遺言書での配慮が必要です。
注意点
里子制度では不動産や資産の相続はできないため、養子縁組とは目的が異なります。
まとめ
養子縁組や特別養子縁組、里子制度にはそれぞれの特徴とメリットがあります。
「特別養子縁組と普通養子縁組ってどちらを選ぶべきですか?」っていう質問を受けるのですが、これは目的が異なるので、不動産や相続対策を目的とする場合は、普通養子縁組を選択しましょう。
不動産の相続や承継計画に大きく関与するため、重要な選択は間違いないです。
必ず専門家に専門家に相談しながら、適切な選択をしてください!